ただ、威張るだけの上司が成り立つ理由

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飲食店 現場体験記

こんにちは。今回は世の中でよく聞く言葉で、現在だけでなく過去にも遡れば、おそらく皆さんの周りにも1人はいるか、いたであろう『嫌いな上司』に関してのお話しです。

ちなみに、 “嫌いな上司” のお話しというと 、「こんな事をされた」とか「こんな事を言われた」などのただの悪口や愚痴を並べるだけの内容になってしまいそうなので、ちょっと角度を変えて、 “困った上司” といったニュアンスでお話しを進めます。また、そんな上司の存在は飲食業に限った話ではないと思いますが、ここでは、飲食店の現場から見た観点でお話を進めさせてもらいます。

そして、困る内容としては、たいした仕事をしないで、ただ偉そうにしているだけで、お店の中で1番お金を多くもらっている事。そして、その ”困った上司” というのが、タイトルにあるような『ただ威張るだけの上司』という事になります。

飲食店で “上司” や “偉い人” というと、店長さんや料理長さんが一般的です。そして、さらに “偉い人” でいうと本部スタッフと呼ばれる人達がいますね。その中で、特に威張るだけになりがちなのは、「実力はないがタイミングだけで上に上がった人」「人材不足の中で消去法で上に上がった人」「人の手柄をうまく自分のものに出来た人」「口が達者な人」「他社から呼ばれてきたコンサル的な立場の人」などですね。

もちろん、これらの人達にも認められる点はあります。例えば、「口が達者な人」の “しゃべりの能力” は立派なものだと思いますし、「人の手柄を自分のものに出来た」「タイミングで上にあがった」というのも、運を味方に出来たからだったり、世渡りが上手かったからだったりと、それなりの理由があるとも思います。ただ、やはり困るのは、その実力や仕事ぶりに給料の配分が見合っていない偉い人が多いと感じる点です。

そんな上司は、100席以上ある大型店舗や、多店舗展開している飲食会社など、お店の規模が大きくなればなるほど、よく見かけるようになります。そして、そういった上司が発生してしまう原因も、飲食業ならではの理由があるのかな、と思うので、今後そのような流れが少しでも改善していく事を願い、その理由を紹介させてもらいます。

そして、ちょっと大きなお話しになってしまいますが、そんな上司が蔓延していくことは、飲食業界のボトムアップにつながらない、と思います。なので、そんな存在を減らしていくためにどうすれば良いか、を考えるきっかけとなればありがたく感じます。

【ただ、威張るだけの上司が成り立ってしまう2つの理由】

という事で、『ただ、威張るだけの上司が成り立ってしまう理由』についてですが、全く逆の2つの理由があると思います。人のスキルや能力を、ぶっきらぼうに批評するのは良い行為ではありませんが、あえて簡潔に表現させてもらうと、以下の2つになります。

①部下の能力が低いからそうなる

②部下の能力が高いからそうなる

の2つです。

真逆ですね。詳しくは、後ほどお話しさせていただきますが、簡単に解説すると

・部下の能力が低い ⇒社会人として当たり前の部分が欠けている部下が多い場合、当たり前の部分の教育だけで上司の仕事が成り立ってしまうケースがある。そして、当たり前の教育だけで偉い人の仕事が成り立つと、資本主義経済の本質の “稼ぐ” という行為の出来ない偉い人(ただ役職として偉い人)が蔓延していく。

・部下の能力が高い ⇒部下の能力が高いので既に「威張るだけ上司」の存在がなくてもお店の経済活動は問題なく行える。それでも、上司はそのポジションに居座るから、やることなくただ “居る” だけになり、その “自分の上司としての存在” を主張(正当化)するために、威張るようになる。(マウントを取ろうとする)

といった、2つの理由になるかと思います。どちらも、お店にとっては非常に良くない状態で、お店の成長にはつながりません。。。そんな、良くない点を少しでも解消していくための対策を、その理由の詳細と共にお伝えいたします。

① 部下の能力が低いからそうなる

理由その1、部下の能力が低い場合に関してですが、言葉の本質的な意味としては、「能力が低い」というよりは、経済活動における「数字への認識が低い」といった事になります。

数字の認識とは、ごく簡単に言うと【売上、経費、利益】の関係性の事で、お店がどのように成り立っているのかについてです。やはり、この点を多くのスタッフが理解した上で日々の業務を行っていると、お店の底力が上がります。

例えば、大学生のアルバイトスタッフや、社会人1年目のスタッフに、全てを分かった上で働いてください、とは求めませんが、2年、3年と働いていく中で、売上、経費、利益に関して少しでも分かってもらい、その点を意識しながら働くスタッフが増えていけば、よりレベルの高い仕事を行えるようになります。

以前、働いていた職場での出来事です。

その職場というのは日々多くのお客様が来店される人気店で、特にランチのピークタイムは、よく言う “戦場” のようなお店でした。そういった人気店で、シェフとして5年ほど働いていた男の子とお話ししていた時の事。その男の子は、ポジション的には副料理長の下で現場の前線に立つスタッフで、入ってくるオーダーの時間と内容のバランスを見ながら、厨房全体の作業の割り振りを行い、適切なものが適切な時間に提供されることをリードする役割を担っていました。

自分はホール側にいたのですが、そのスタッフを頼もしく思っていましたし、オーダーミスなどの何らかの理由でトラブルが発生した際など、そのスタッフの急な対応に助けられもしました。

そんな、現場では頼りになる男の子でしたが、イレギュラーオーダーの売価の相談をした際に、使用する食材や原価の確認をしたところ、話がスムーズに進まなかった事があります。

また別件で、食材の仕入れ先を変えた時、「新しい食材に変える事で月に○○円も安くなるんですよ」と、飲食店で日々当たり前に行われているであろう話しを、とっておきの情報のように得意そうに話す彼を見て気付きました。

5年近く働いている事で、現場の仕事はしっかりと覚えて頼りになる存在となってはいるが、管理業務というか、数字に関係する部分においてあまり教わってこなかったのかな、あるいは、触れる機会が少なかったのかな、と。

ちなみにそのスタッフに限らず、今まで経験した飲食店の中で、自分たちが使用している食材、飲料や備品、購入する什器や、ルーティーンで支払っている費用などに全く興味のないスタッフが多かった気がします。もちろん、そういった点をしっかりと把握して、一番気にしているのは “店舗長” で良いのですが、店舗長以外の人も、気にするスタッフが多い方が、より健全なお店の運営につながります。

こういった問題は、そのスタッフ自身の意欲の問題、というよりは、そういった教育を段階を見て同時に行っていく必要がある、という、スタッフ育成の問題かと思います。そして、その数字の知識のないスタッフが増えていく事こそが、 “威張るだけ上司” を成立させてしまっている、という点にも気付きました。

というのも、数字に関する管理は、実はさほど難しい事ではない、と思います。今の世の中では高性能なPOSシステムも利用できて、セールスとコストのデータ化が簡単に行えます。その使い方と、【売上、経費、利益】の根本的な構造を理解していれば、さほど頭を使う必要もありません。(データ管理のための最初の情報整理と設定は、けっこう頭を使うかもしれませんが、、、)

ただ、飲食業に携わる人は、そもそもデスクワークが苦手な人が集まっているケースが多いので、数字に対して苦手意識の強い人が多いです。「食わず嫌い」のような感じで、経験する前に出来ないと思ってしまう人が多くいると思います。そして同時に、そういった管理を行う事自体に対しても、軽視していて必要ないと思っている人も多いと思います。

そういった環境下だと、世間的に見たら出来て当たり前のような数字の管理を行える事が、他者より秀でた特殊能力になり得てしまいます。

そして、”威張るだけ上司” が出来上がります。

数字の管理が出来る事は能力の一つなので、もちろん評価されてよいと思います。ただ、その能力1本で君臨出来てしまう飲食業の現状は、危ないと感じており、そのような状況が、特に大型店の現場ではまだまだ蔓延している気がします。そして、その能力だけで君臨している人自身も、自分は人より優れて出来ている、と勘違いしやすくなります。そして、その優越感から自分の能力以上に、威張り始めてしまいます。

ちなみに、数字の管理だけでなく、現場の仕事も他のスタッフより優秀に行えて、数字の成果やスタッフからの評判も悪くない、といった上司であれば、理想のリーダーとなり何の問題もないと思います。また、極端な話でいえば、例えばそのような理想のリーダーが “威張って” いても、威張るに値する能力が備わっていてそれを発揮していれば、結果的に他者は認めてくれると思います。(まぁ、嫌われるかそうでないかは分かりませんが 笑)

問題なのは、世間的に見たら大したことのない能力しか持っていないのに、自分は出来る → そして偉い、と勘違いしてしまう上司が出来上がる事。

そんな、上司を増やしてノサバラセナイためにも、スタッフ各々が数字に興味をもって、店舗運営に関する知識を付けていく事が大事です。モノをいくらで仕入れていくらで売った時に、いくら儲かるのか。また、それを売るまでにかかってくる費用はどういったものがあって、どれくらいの金額になってくるのか、という点を理解していってくれると良いですね。そして、そういった教育と知識習得は、スタッフのより高度な仕事につながっていくと思います。そうなれば、お店もレベルアップできるはずです。

ちなみに、飲食店で長く働いていると、数字への関心以前に、社会的なモラルに欠けるスタッフが多くいる場面にも遭遇します。

例えば、落ちているごみに気付いているのに拾わない、制服を脱いだらそのままにして帰る、といったスタッフがいる場合、落ちているごみを拾いましょう、とか、脱いだ制服はクリーニングのボックスに入れて帰りましょう、というレベルで監督をする必要が出てきます。

こういった事に時間と労力を使わなければいけない環境も少なからずあったりしますが、そのような本当の意味で、部下の能力が低い時は、可哀そうなのは上司ですね。

② 部下の能力が高いからそうなる

理由の2つめ、部下の能力が高い場合ですが、こちらはそのままの意味合いです。部下が優秀で、上司は店舗運営において実務をやる必要がなくなってくるから、仕事をしなくなる、といったパターンです。そして、冒頭でもお話ししましたが、実務を行わなくなるが、それでも上司の位置に固執するため、形式上だけ上司っぽく振る舞う=威張るようになる、という流れです。

といっても、部下たちに店舗運営の全てを任せられる状態は、店舗長からすれば理想的な状態でもあります。ただ、その状態になった時に、如何に、店舗長が店舗長ならではの仕事を自ら行えるかどうか、が重要です。例えば(一概に、以下が店舗長としての正解とも言えないかもしれませんが、例として)

・従業員のモチベーションアップのために、定期的な面談などでコミュニケーションを取り、職場環境の改善を日々行っている

・お店の成績がもっと良くなるように、経費全体を見つめなおして改善を図る

・お店の成績がもっと良くなるように、新しいメニューや販売オペレーションを検討して実践していく

・お店の健全な運営のために、スタッフ各々の能力や適性を見ながら良いチームを作る

・トラブルが起きた時に真っ先に矢面に立って問題解決を行う

・お店の顔として、多くの顧客を作る

これらがズバリ正解かどうか分かりませんし、まだまだポイントは他にもたくさんあるかもしれませんが、現場で起きている事や、一人一人のスタッフが行っていることをしっかりと把握した上で、全体のバランスをうまくとって店舗を良い方向に導いていく事が、店舗長のお仕事の一つであると思います。

こういった行動を日々の営業でしっかりと行えていれば、ただの威張るだけ上司にはならないかと思います。言葉で言うのは簡単ですが、以下のような感じでしょうか。

現場のチームの一員として、現場で汗をかき働くこともありながら、全体を常に見渡しつつ、有事には率先して矢面に立って問題を解決する。

現場の苦楽を共にする “一体感” と、現場スタッフが困ったときにしっかりと助けてくれるという “信頼感” の両方があれば、おそらく上司は慕われます。加えて、上司ゆえのパフォーマンス力の高さと統率力、を見せる事が出来れば、部下たちの心もがっちりとつかめます。

逆に、現場でのパフォーマンス力が弱ければ、一気に部下に失望されてしまうので、上司の人は、スキルを磨き続ける事、自分の強みを理解して上司という立場でその力をうまく見せていく事は重要です。

でも、自分のスキルに自信がないためか(あるいはそもそも現場の仕事が出来ないパターンもありますが)ミスをした時の失望を恐れて、現場に近づかないようになる、矢面に立とうとしなくなる、という上司も多いと思います。

ただ、こんな行為は優秀な部下に間違いなく見抜かれます。「あ、逃げたな」とか、「いつもうま~く逃げるよね」「肝心な時にいないよね」といった、『逃げる人』『頼りにならない人』のレッテルを貼られます。そんなレッテルを貼られている上司の言葉は、おそらく部下の心に響きません。

やはり、困難に立ち向かっている姿がなければ、人の心を動かすことはできません。

ちなみに、部下の成長のために仕事を任せるというのも、部下を育てる、という上司の仕事の一つだと思います。なので、現場の全てを任せられるようになる、というのは、店舗長にとっては仕事の最終目的地かもしれません。店舗長は部下を優秀に育て、現場を任せられるように動きますが、同時に、優秀な部下の台頭により自分の居場所がなくならないように、上司の人はさらに上の仕事を身に付けていく必要がありますね。

【まとめ ~うまく監督する~ 】

部下の能力が、低い場合、高い場合とそれぞれありましたが、上司の振る舞いとして、ちょうどよい単語がありました。『監督』です。

娘の国語辞典を借りて調べてみました。

『監督』:「みんなに指図したり、取りしまったりすること。また、その役目の人」(光村教育図書 小学新国語辞典 改訂版)

◎現場に出て、その時の状況や各スタッフの能力に応じて、”みんなに指示していく”

◎意識の低いスタッフや、モラルに欠けるスタッフを、”取りしまっていく”

ドンピシャでハマっているわけではないかもしれませんが、ニュアンス的に近い気がします。現場をうまく監督する事が出来れば、その上司に意味はあります。(威張るだけではなくなります)

ただ、上司が上司としてしっかりと認められる事は、なかなか難しい事かと思います。自分が今までに経験した職場で、慕われる上司には会った事がありませんでした笑 大体、ちゃんと嫌われていましたね笑笑

そして、そのほとんどはやはり、信頼関係のない形式上の上司と部下の関係でした。

寂しい意見かと思いますが、そんな関係、世の中に本当にたーくさんあると思います。

組織上で、Aが上司、Bが部下となっているから、それに従って言うことを聞いているだけ。上司が自分の評価をするから、給料を下げられるのが嫌なので、上司としてあがめているだけ。また、実際の能力も上司Aより、部下Bの方が優れている事もあるため、尊敬するのはなかなか難しいというパターンもあります。

こんなことを言い始めると本当にキリがないので、ここで止めておきます。

ちなみに、仕事によっては、ある程度ドライに距離感を保てる方がうまくいく、という考え方や事実もあると思います。確かに、それもあると思いますが、やはり、”気持ち” や “想い” の部分で共鳴して信頼があった上で仕事をしていた方が、より良い仕事が出来る、より良いモノが作れるのかな、と思います。

そして、信頼関係を作るために必要なものは、「感謝」と「尊敬」かな、と思います。特に、能力の差が生まれてしまった場合などでも、感謝と尊敬の念を示していれば、そこまで部下に嫌われないかもしれません。

例えば、部下Bより能力が劣る上司Aの場合。Aがその事実を分かった上で、部下Bが行う仕事に対して感謝と尊敬の念を前面に出し、その中で、Aが上司として行える最大限の評価をBに与える。意地を張って、無理に抑え込もうとしない事が大事だと思います。この場合、Bに対して「負けを認める」というよりは「Bを素直に認める」という事ですかね。

その気持ちだけで、部下に慕ってもらえるかは断言出来ませんが、少なくとも感謝の気持ちがなければ、信頼を生むための一歩すら踏み出せていないと思います。

寂しい人間関係よりも、慕われる上司になったほうが良いですよね。

長文失礼いたしました。

最後までお読みくださりありがとうございます。

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